2.02.2011

日韓ワールドカップ

2002年6月18日、
予選を勝ち抜いた日本はトルコにあっさり負けてしまった。
なんともつまらなくて、なにげなくTVを見ていると、
ソウル市庁舎前に膨大な韓国サポーターが集結しているのを見て、
「そうだ、、今度は韓国を応援しよう。。ついでにここの写真も頂こう。」
韓国人の友人に連絡をして21日にソウルへ飛んだ。

空港まで車で迎えにきてくれた友人の後輩に
リクエストして、プルコギを食べた。
地元で評判らしい庶民的な食堂だったが、
野菜達がどれも新鮮で、とてもしっかり自己主張していた。
顔は一見似てる日本人と韓国人、、、
骨格や性格が、とても力強いイメージを持っていたが、
肉や野菜までも迫力が感じられた。。。

翌朝、スタジアムの真ん中にいるような
「テーハミング」の地響きで起こされた。
ニュースでは85万人のサポーターが
ソウル市庁舎前に集結していると騒ぎ立てていた。
ライカM6とワイドラックスF8を持って街に出た。
先輩の指示で、翌日も来てくれた後輩の彼と街を進もうにも、
既にすべての場所が大混雑していて思うように前に進めない。
いたるところで警察がゲートを設けているせいもあり、
道の向かいにいくだけでも時間がかかった。
まだキックオフまでには時間があったが、
閉口している彼と、とにかく広場に面しているホテルに
なんとか辿り着こうということで、
ビルの中を抜けたり、人並みをかき分けてなんとかホテル前に着いた。
渋谷のスクランブル交差点に85万人が集結しているようなものである。
街の全ての道路にぎゅうぎゅうに人があふれ、トイレに行く事すらできない。
老若男女問わず身動きできない状況で、
みんなトイレはどうするのか、不思議に思い、
彼に訊ねると、、「みんなオムツしてんすよっ」
さすがである。韓国人、おそるべしなのである。

いろいろ動き回って撮影しようと考えてはいたが、
数メートル進むのさえままならない。
一枚いい写真を撮ろう。。
一撃必殺に作戦変更した。
ホテルの建物の屋上を見ると報道関係らしき人影が見えた。
ホテル内はプレス限定で入場制限していた。
一瞬、準備不足を後悔したが、財布を見ると、
なぜかたまたま某出版社のプレスパスが入っていた。
写真の神様、さすがである。
彼と試合後にホテルの前で合流する約束をして、ホテルの玄関に突入した。
そして、まだあまり人が入ろうとしていないプレス入り口が
混雑してくるのを、タバコを吸って待った。
キックオフの2時間程前にどっと報道関係者が入り口に集まってきた。
すかさず「ニッポンマガジンです!」と日本語で話し、
プレスパスを見せて、漢字で書類にサインをしてホテル内に入り込んだ。
わきめもふらずに屋上に向かった。

壮観だった。
85万人による「テーハミング」の咆哮は凄まじかった。
地面も空気も人々の気持ちも轟いていた。
ソウルの街を埋め尽くす、85万人のオムツをした真っ赤なサポーター達が
まるで写真の粒子のようだった。
アメリカなどでは良く見かけるが、巨大なクレーンで旗を浮かべている。
しばらくして、うまく潜り込んだ彼も屋上にやってきて
自国のサポーターの眺めにとても興奮していた。

15時にキックオフした瞬間、
無数の赤い風船が空に舞い上がったのを見て
ワイドラックスのシャッターを切った。

この試合は、PK戦のすえに韓国がものにしてベスト4に進んだ。
その夜、大騒ぎのソウルのスポーツバーで、合流した友人と祝杯をあげた 。


先日、日本はアジアカップに優勝した。
どの試合も、とても楽しめる素晴らしい戦いだった。
2014年のブラジルワールドカップで、もし日本がベスト4になったら、
日本のお上も、巨大なモニターが林立する渋谷のスクランブル交差点くらい
パブリックビューとして解放する懐の大きさを見せて頂きたい。
この写真と並べる、青い「パノラマ」として「PANORAMAN」に加えたいと思っている。

→PANORAMAN

WIDELUX F8 f8 1/250s ネガ スープラペーパー