12.13.2011

消える魔球

Canon EOS1DsMkⅢ Sigma reflex600mm ISO100
シャッターは1/320~1s
1秒ならぶれないと踏んでいたが月はやはり少し動いていた
一昨日の皆既月食を撮影した写真を並べてみたものを見た友人が、
フェイスブック上で残してくれたコメントが「消える魔球」だった。

47年も生きてきたが、約4時間フルタイムで皆既月食を見たのは初めてだった。
星飛雄馬の消える魔球もリアルタイムで見ていたが、
少年ソフトボールのキャプテンで、消える魔球の夢は途絶えた。
もし子供の頃に、月食をフルタイムで眺めて
身近な人が撮ったこういう写真を渡されたら、
今とは随分違う人生になったかもしれないと思えるほど楽しい経験だった。

先日、NHKのドキュメンタリーで宇宙飛行士の若田光一さんの特集を見たが
子供の頃からの夢であった宇宙飛行士になるために
20代で日本航空のエンジニアを辞して、今年で48歳。
来年は国際宇宙ステーションのキャプテンとして再び宇宙に長期滞在するらしい。
私より一つ年上のおじさんが、ロシア語で過酷な訓練を行い
屈強なアメリカとロシアを中心としたアストロノーツ達のキャプテンとして、
生死をかけて仕事をしているのが、なんだかとても羨ましい気がした。

今年一年を締めくくる漢字に「絆」が選ばれたようである。
日本人が家族・友人のことを想い、
今こそ本音で助け合うべき時であるのは間違いないと思う。
誰もが年賀状で新年の喜びを心から表すことができるかどうか考えてしまう一年となった。

私が思う今年の漢字は「嘘」である。
「ただちに影響は無い」という「嘘」からはじまった負の連鎖が
地震で大打撃を受けたこの国を覆い尽くしてしまったように感じる。

まつりごとではなく保身に走る政治家や、誇りを失ってしまった大手新聞が
「嘘」を重ねるうちに、日本はとんでもないことになってしまうのでは?と
国民みんなが危惧している。
そして、健康被害が顕著にでる可能性のある子供達は、
じつはその様子を確実に心の中に焼き付けているはずである。

「消える魔球」や「皆既月食」を素直に見つめ、
思いのまま育って欲しい子供達のためにも、
大人が自分の生き方を見つめなおして、
嘘をつかない生き方を「見せ」なければならないと強く思う。

日本人が様々な苦悩に包まれたまま
年末を迎える・・・

12.09.2011

アサヒビールイメージガール1995・盛美恵

居酒屋の壁で、酔っ払いに向かって微笑んでくれるビールのポスターは、
もはや現代における「浮世絵」だと思っている。

1994年夏、瀬古師匠が数年担当していた
アサヒビールイメージガール盛美恵さんのポスター撮影に
アシスタントとして連れて行ってくれた。
約一週間、沖縄で朝から晩まで撮影を繰り返す夢のようなロケだった。
一日で真っ黒に日焼けした体は、日に日にどす黒くなり、
油断してサンダルで仕事をしていたもう一人のアシスタントは足の甲が膿んで
使い物にならなくなっていた。
空模様と時間を考えながら、灼熱の暑さのなかで
連日フルタイムで撮影をするというのは、いくらアシスタントがたくさんいても、
傍からみてるよりはずっとしんどいものである。

ある日の午前中に、師匠がすこし具合が悪くなってしまい
近くの病院に点滴を受けにいくことになった。
「中山、お前撮れるだろ?すぐ戻ってくるから2,3カット進めててくれ」
そんなことを言って、師匠は現場からいなくなってしまった。
そんなわけで、覚悟を決める間もなく半日カメラマンに任命されて
いきなり写真を撮ることになった。
カメラの操作や、レフの使い方はいくら把握していても
やはりいきなり現場で絵を決めて、大勢のスタッフによる大船団を動かすのには
さすがにどきどきした。
当時は、あまり具体的なラフはなかったこともあり、
現場で美味しいところで狙う感じが多かった。
自分の写真に関しては、意味不明な自信はあったが、
いきなり誰もが知ってる全国区のアサヒビールのポスターである。
ファインダーを覗きながらはじめの2、3枚はきっと指とか震えていたかもしれない。
今も御世話になっている日本コマーシャルフォトの大久保さんにも
レフを持っていただいたりしながら無事数カットを撮影することができた。


それから数年後、カメラマンとして独立して、
師匠に「悔しかったらこのくらい買ってみろ」と
散々言われていたベンツ300TEも中古で買った。
オフにはハワイくらい行かないと話しにならんだろ?
などと意味不明にハワイに遊びにいった。
そしてハワイで生活をしている盛美恵さんの自宅に御邪魔した。
出迎えてくれたのは、なんと盛さんの彼氏だった。
親も同居してる家で、彼が出迎えてくれるなんて、、さすがアメリカである。
リビングに入ると、壁にアサヒビールのポスターが額に入れられて飾ってあった。
自分が撮影したカットが一枚ポスターになったという話は聞いていたが、
そこに収まっていたのは、震えながら撮影したまぎれもなく私が撮ったものだった。
「私が一番好きなポスター、中山さんが撮ってくれんだよね~」
最高に嬉しい一言だった。
大事にしていたストックを一枚頂いた。

Canon T90  Velvia +1/2
はじめは、やしの葉っぱも背景に垂らして
ベンチも入れた引きで狙っていたのに、
気が付いたらここまで寄っていた・・

それから、かれこれ10年以上が経ち、
レフを持っていただいた大久保さんの御紹介を頂いて
2007年度の篠原真衣さん、2011年度の春輝さん、
そして来年度の坂井裕美さんの撮影を担当させていただくという幸運にも恵まれた。

来年度で26年目を迎えるアサヒビールイメージガールのポスターというひとつの「文化」が、
いつまでも続いてほしいと思っている。


ここだけの話で、付け加えておきたいことが一つ。
以前のアサヒビールの担当者だった岩崎さんが年末に送ってくださっていた
アサヒスーパードライが、めちゃくちゃ美味しくて、
我が家に遊びに来た方に気軽に出すのも躊躇われるほどで、
絶対になにか秘密があると、ずっと気になっていたが、
その謎が解き明かされた商品が発売になっている。
ギフトだけの特別なスーパードライ
年末には、自分に御褒美で、買える値段のマルゴーを飲んだりもするが、
実は、それに負けない笑顔になることが出来るビールが
ビックカメラでオーダーできるのである。
ビール好きな方は、是非!