7.30.2012

「企救中」東京展閉幕・篠原信一

写真展「企救中」東京展の撤収が完了しました。
暑い中、会場に足を運んで頂いた皆様、心から御礼申し上げます。
どうも、ありがとうございました。
たくさん頂いたお花は、部屋のコーナーに置かせていただきました。
モノクロの肖像写真達と、花の色と香りのコントラストが会場を包んでいました。
山のように頂いたお酒やお菓子は、
夕方以降に来ていただいた皆様と美味しく頂きました。
持ち帰ったお酒は、ゆっくり頂きます。

ほんとうに、ありがとうございました。

8月の3日から北九州展が始まります。
巨大な写真約50枚を特注のケースで新幹線で運びます。
ヘリで簡単にいける山の頂に向かって、歩いて登山をするような気持ちで
同級生達を連れて帰省したいからです。
どうやら台風も連れて行くことになりそうですが、
是非とも、お誘いあわせの上、御来場下さい。
よろしくお願い致します。

中山達也写真展「企救中」詳細



東京展が無事におわり、
久しぶりにゆっくりした気分で風呂上りにテレビをつけたら、
柔道の海老沼選手の試合が行われていた。
なんとなく延長戦になり、勝負が付かないまま
判定となって唖然とした。
どうみても優勢であるはずの海老沼選手とは反対の旗が3本上がったのである。
その瞬間、観客席で手を広げて声をあげている篠原信一さんが画面に映った。
2000年のシドニーオリンピックで疑惑の判定で優勝を逃した篠原さんだった。

今から12年前、シドニーオリンピックの100キロ超級で出場を決めた
篠原さんを取材するために奈良の天理大学を訪ねた。
広い体育館のような柔道場では、たくさんの生徒さんたちに混じって
オリンピックに出場する選手も普通に練習をしていた。
慣れた畳の上で、オリンピックに向けて調整していると思われた。
暑かったこともあり、狙うのはやはり汗である。
丸太のような腕で帯を直している篠原さんに近づいて
とにかく汗をかいたままの状態で撮りたいので、
小休止の時に、汗を拭かないまま、
小さな部屋にセッティングした椅子に座って欲しいと伝えた。

Hasselblad 500CM 100mm トライX
練習が終わって、とてもさわやかな篠原さんが登場したので、
迷わず、さわやかな写真を撮らせて頂くことにした。
「キムタクみたいに撮ってくださいよ」と野太い声で言われた。
「こないだキムタク撮りましたけど、ぜんぜん篠原さんのほうがかっこいいすよ」
篠原さんのこれほどの素の笑顔は、この時以降拝見した覚えがない。

Hasselblad 500CM 150mm EPN

完全に誤審とおもわれるシドニーでの決勝戦敗戦の後、
優勝というタイトルを獲ることなく引退された。

おそらく我々が想像できないような想いがあったに違いない。
誤審についてあまり多くを語らない篠原さんの生き方には共感するところも大きい。
想像ではあるが、格闘界からの誘いもすごかったはずである。
柔道家として、日本の代表監督を務める篠原さんを男として大好きである。

後輩の日本人選手が再びあきらかな誤審で敗れようとしているデジャヴを、
テレビに映る篠原さんがどういう思いで叫んでいるのかを想像するだけで、
胸が詰まる思いだった。

柔道は、もはや柔道ではなくなってしまったのかもしれない。
フランス・ブラジルの子供達は柔道を自国発祥のスポーツと思っているとも聞く。

ロンドンオリンピックで、再び篠原さんのあの笑顔が見れることを祈念している。