5.01.2017

桜2017

小淵沢では例年よりも遅くに桜が咲いた。
そもそも、桜なんてものは春の訪れを体で感じながら視界の片隅にぼんやり捉えて心の中で嗜むくらいがちょうどいいと思っていたし、花見と称してうすら寒い桜の下で酒を飲むのは酒好きのただの言い訳くらいにしか思っていなかった。ただ、今年は自分自身にとって小淵沢の泣きそうだった初越冬を無事にクリアできたこともあり、地元の人たちが厳しい冬を乗り越えていったいどんな桜を愛でながら春の到来を受け止めてきたのかをこの目で見ておきたくて、ウエザーニュースとネットの開花情報を頼りに近所の桜の名所を積極的に追いかけた。

★わに塚の桜(一本ザクラ)
推定樹齢300年。長きに渡って自由に育ったと感じられる枝ぶりがどの角度から見てもとても力強く素晴らしい。朝方は順光で八ヶ岳、夕方は順光で富士山を狙うことができるので満開時期に天気がいいと多くの人が三脚を並べて待機している。エドヒガンザクラという種類で色濃く小さな花なので、開花したてと満開以降ではずいぶん花の色が違って見える。開花シーズンには18時半〜20時半にライトアップが行われるので、可能であれば昼時に温泉等で時間を潰す作戦で、霧に霞むかもしれない朝焼けと夕焼けに染まる富士山とライトアップされた荘厳な一本ザクラの一石三鳥がおすすめ。30年撮り続けていたり、会社の行き帰りに撮影に立ち寄るような地元カメラマンもごろごろしているので桜を眺めながら情報収集するといろいろと面白い話も聞けて楽しい。
写真はクリックでフルスクリーン推奨

★実相寺の神代桜
神代桜は推定樹齢2000年。開花シーズンはさすがに混み合っている。2000回も開花を繰り返し、一体どれだけの人々に春の喜びを与え続けてきたか想像もできない。この一本の樹を存続させる叡智を持ちながら一方で自然破壊を繰り返す人類のジレンマを感じずにはいられない。そのまま妖怪になりそうな太く変形した幹とは裏腹に思ったより力強く豊かに花を咲かせていることに驚いた。NASAの宇宙実験から帰ってきたこの神代桜の種が育った桜も境内に存在する。実相寺境内にはいろんなタイプの桜が濃密にぎゅうぎゅうに詰まった感じでエネルギッシュに咲いている。もしかしたらこの土地には何か植物を活性化する秘密があるんじゃないかと思えるほどに迫力を感じた。手が届く高さにも花がたくさんあるので桜の花の写真を撮るには最高の場所かもしれない。
開花シーズンは駐車場500円 畑駐車場は400円。神代桜は日中はずっと順光なので昼前に行って、境内の周りに立ち並ぶ地元ならではの出店でほかでは食べれない軽食をとりながらゆっくり桜祭りを楽しむのがおすすめ。

★真原(さねはら)桜並木
山の中に突然出現するソメイヨシノの750メートルのトンネル。都会の桜並木よりも樹の背が高く、荒々しく枝が伸びているのが印象的。満開以降に車の窓を開けてゆっくり走るだけで桜吹雪が舞い込んできて極楽。道脇に地元の農家のマダムが並べて売ってる野菜がとても元気で安いので要チェック。中央付近の無料駐車場から桜並木を横切って山側に少しいったところに別の駐車場がありその傍に若い桜が元気に並んで咲いている畑がありそこはほとんど人がいないので人物がらみで写真を撮るにはおすすめ。


上記の三箇所は車ですぐに行ける範囲に存在しているにもかかわらず、開花時期にかなりずれがあるので、一網打尽にできないのが悲しい。開花情報は事前に確認したほうがいい。

★高遠城址公園の桜
一度見てみたかった天下第一という謳い文句の桜。
小淵沢から車で約1時間。茅野からの道も午前中は車も少なく、途中の山村の桜を目の端で楽しみながらの快適なコースだった。
公園の丘の下には無料駐車場もあるが竹下通り状態の登り参道を(できれば小さな車で)進んで正面入り口あたりの有料駐車場(700円)に止めるのが便利。公園入場料500円。タカトウコヒガンザクラという固有種の色濃く小さな花がびっしりと空を覆って、まるでピンクのフィルターをかけたような色空間だった。観光客はもちろん多いが車でのアクセスマストなので酔っ払いは見かけずとても静かで平和な空間になっていた。城址ということでピンクの鎧に身を包んだ武者たちが静かに晴れ舞台に立ち並んでいるような気配も感じて、ライトアップのための電柱の無造作な配置がいささか残念ではあったが、天下第一という謳いも偽りなしだと感じることができた。

★フィオーレ小淵沢
小淵沢のアジト至近の公園。桜の状況は中央高速道路越しに目視できるのでいつも様子を伺っていたが、今年はどうやら開花時期にかなり個体差があったようで、葉桜とつぼみが混在していたりで、ザ・満開というタイミングを逃したかもしれない。あたたかい時期はいつ行ってもいろんな花が待っていてくれるマイ公園。

『またな、桜!』と言いたいところだが、来年の桜までにはまたあの恐怖の冬を越さなければならないと思うとぞっとする。
ま、地元桜カメラマン一年生、のんびりやろう♪